【西新宿日記】 令和3年6月10日
コロナ禍から日常へ戻る途中の夜10時をまわる頃、思い思いの缶チューハイを片手に40代あたりの大人の3名が駅へと歩いている。時節柄、仕事の付き合いでの呑み会にはならず、金曜日の夜、気分は休日とあり、その背中は楽しげだった。
本の森に埋もれたい一心で、閉店前のブックファーストへ足が早まる。沢山の棚から棚へゆらゆら目を移しながら、結局、サマセット・モームの文庫本を手にとり。
長時間の飛行機に乗る前に選ぶような本を手に取る自分自身も、少し浮かれている事に気がつく。
物事はこれ以上悪くはならないと、心の底で感じているんだろうか。
結局、蛍の光の閉店音楽が流れて来てしまう。
帰り道には、梔子の香りを微かに聞いて、初夏の訪れる前の梅雨の湿度を感じていた。