【父の書斎】

父は、ずっと何かの締め切りのために原稿書き、その他の時間で他言語の会話を聞いていた。ポルトガル語はとっつき易いとか、ロシア語は難しい割に仕事が無いからやめた方が良いとか。今思えば、言語オタク。

珍しい言語の本が発売されると、我先にと嬉々として発音練習をしていた。

父曰く、ヨーロッパの言語はゲルマン系かラテン系の2つに分かれているだけで、方言レベルの違いしかないらしい。

アジアの言語も好きだったようだ。漢字をよく書いていたので、中国語は好きだったのかもしれない。

父の書斎はありとあらゆるジャンルの本や、仲間が出して送られてくる本、出版社からの営業で送られてくる本、古い紙の匂いと新しい紙の匂いがまじって、甘い独特の香りがした。